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【行動経済学】人間の性質を知って活かす【アクションプラン付き】(後編)
- 決めたことが守れない…
- お金が貯まらない…
- 他人はコントロールできないというが…
- 自己コントロールを学ぶ
- お金を使うとき思い出そう
- 他人のやる気を引き出す方法
✔️ 紹介本
📕 お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学
ダン・アリエリー 2014
デューク大学教授。イスラエル系アメリカ人で心理学と行動経済学の教授。
1 自己コントロールを学ぶ
人が物事に対して抱く
価値は「現在」が最も高く「少し後」で急激に下がります。
そして「かなり後」と「さらにその後」とでは価値の下がる角度はなだらかに減衰します
(双曲割引 hyperbolic discounting)。
さらに、最初は大きな報酬・価値が最大化するまで待とうとしますが、
もらえる時が近くに連れて、先にもらえる小さな報酬に魅力を感じるようになってしまいます。
人は未来ではなく「現在」を生きており、「現在」の自分はいつも誘惑に負けてしまいます。
人は現在の誘惑に弱いのです。
それでは、現在価値の誘惑に負けず、
価値の最大化や目標達成を求めるにはどうすればいいのでしょう?
代替報酬 reward substitutionがあるかどうかを検討しましょう。
人が興味を持つ別の何か、
代替報酬を見つけることができれば、
それに夢中になって、
結果として価値最大化や目標達成ができるようなります。
目的につながるワンクッションを探すイメージです。
歯を守るためには、歯磨きが必要です。
人によっては、歯磨き粉の爽やかなミント風味を味わいたいことが代替報酬となっており、
代替報酬を手に入れることが歯を守ることにつながっているのです。
スウェーデンのある駅の階段には、
ピアノ鍵盤のように音が鳴る階段があります。
階段を登ることが楽しくなるので利用するようになります。
結果として階段利用が66%増えて、
運動につながる習慣になりました。
代替報酬をより強化するために、
損失回避(loss aversion 失う辛さは、得る喜びの倍)が有効です。
薬を飲ませる実験では、薬をきちんと毎日飲めばお金が渡されます。
この実験では、
毎日薬を飲んだとみなして、前払いでお金を先に渡してあげます。
しかし、飲まなかった場合は前払金を返金させるというルールです。
失う辛さを味わうことは、苦痛なので、ルールを守ろうとするのです。
目の前のマシュマロを我慢し、
将来の増えたマシュマロを手に入るまで待つことができる子は、
そうでない子と比べると、
学業成績が良く、犯罪歴が少なく、健康に過ごしたそうです。
将来、自分が良くない行動をとることが既に予想できるなら、
自己コントロールのために自分の手をあらかじめ縛っておくこと、
自己コントロールのための環境設定(self-control contract)が重要です。
運動をサボりそうな場合は、
トレーニングジムに前払し「支払いの痛みと報酬」を事前に設定することが有効です。
オデュッセウスは、
セイレーンの歌声を聞いたら誘惑され船を難破させられることを分かっていました。
だから、自らをマストに縛りつけ、
乗船員に耳栓をつけさせることでセイレーンをやり過ごすことができたのです。
(イリアス・オデュッセイア ─まんがで読破─)。
★自己コントロールのアクションプラン
取り組めていない目標に対して、
代替報酬(望ましい結果が得られるインセンティブにつながるもの)、
環境設定(行動ルールを遵守させる仕組み)を考えてみよう。
2 お金を使うとき思い出そう
お金の特徴①:相対性(relativity)
15ドルペンと1015ドルのスーツが販売されています。
それぞれ8ドル安く買える場面を考えてみましょう。
8ドルの価値は同じはずです。
しかし、私たちは総額に対する8ドルの割合で考えてしまいます。
だから、1015ドルのスーツに対する8ドル引きの価値を、相対的に低く感じてしまうのです。
家のような大きな買い物のとき、
突然の数千ドルの追加費用が発生しても、大したことに思えなくなってしまうのと同じ仕組みです。
お金の特徴②:出費の痛み(pain of paying)
消費と支払いタイミングが同時のとき不快に感じます。
(クレジットカードではなく現金支払いのときです)
支払いが見えるものに痛みを感じます。
しかし、支払いが見えないものは痛みを感じず気になりません。
電気代は気にならないのは、自動的に引き落とされ、リアルタイムで支払っている金額が見れないからです。
もし、リアルタイムで課金されている電気代を見ることができたら、確実に電気代は減るでしょう。
出費の痛みがゼロの世界が実現しています。
Amazon GOです。
棚から好きな商品をとって店を出ると、何もしなくても知らぬ間に課金される世界。
それは、支払いは見えず出費の痛みが無い世界です。
おそらく出費は増えるでしょう。
お金の特徴③:心の会計(mental accounting)
私たちは、お金が用途ごとに別々の財布に厳格に分けられていると思ってしまいます。
ローンを抱えているときでも、支払いは支払い、貯蓄は貯蓄と分けて思い込むことで、
貯蓄があるのにローン返済に回さないといった行動をとってしまいます。
★お金のアクションプラン
・大きな買い物をするとき、オプション追加料金を支払うときには「相対性」が働くことを思い出そう。
本当に必要か一歩立ち止まろう。
・キャッシュレスがさらに進めば「出費の痛み」を感じなくなります。マネーフォワードなど家計管理アプリを入れて支出を可視化しよう。
・ローンが複数ある場合、金利の高いものは一刻も早く潰していこう。
3 他人のやる気を引き出す方法
・お金でモチベーションを高める
業績が高くない人にこそ、お金のボーナス効果は大きいです。
そもそも優秀な人は、何もせずとも働いてくれるからです。
また、チームメンバーにお金使うようにさせると効果が上がります。
ベルギー製薬会社の実験では、
被験者に15€渡して、
自分のために使う場合と、
チームメンバーのために使う場合とで比較しました。
結果、自分に使った場合は売上が4€上昇、
チームメンバーに使った場合は73€上昇したそうです。
お互いを気にかけるようになり、話し合いも増えて、成果が伸びた。
さらに従業員の喜びや生産性を高めることができました。
お金によるモチベーション向上には注意があります。
社会的モチベーションと金銭的モチベーションは共存しないのです。
お金の要素が加わった途端、元々あったモチベーションは失われてしまうのです。
ボーナス日に、
「お金」 「ピザ」「ねぎらいのメッセージ」を送って成果を比較する実験がありました。
この時点での成果はどれも同じでしたが、
ボーナスが無いの日の成果が、ボーナスが「お金」だった人の場合、15%も低下したそうです。
報酬がお金の場合、人は計算高くなり成果が下がることがあるということです。
・モチベーションを奪う
満足感は、挑戦、進歩、達成など深いやりがい(meaning)があるとき得られます。
一方で、満足感を奪う条件のことを、
シーシュポス条件(sisyphic condition)と呼びます。
シーシュポスは神々から罰を与えられ、
岩の塊を丘の上に押し上げなければなりません。
しかし頂上に届くとき、
岩が転がり落ち何度も1からやり直しになるという神話から来ています。
刑務所を舞台とした映画に、
囚人に穴を掘らせ、それを埋めさせ、また掘らせ・・・
同じことの繰り返しによる徒労感が
囚人のモチベーションを著しく失わせる場面があるそうです。
やりがいの実験で、ある用紙の隣り合う文字を見つけたら丸で囲みます。
それが終わったら用紙をスタッフに渡し、それを繰り返す実験がありました。
報酬は繰り返すたびに減っていき、自分の好きなタイミングでやめられるというものです。
・スタッフは用紙をチェック場合(努力の認知)
▶︎15セントまで(最もモチベーションを維持し続けた)
・スタッフは用紙を即シュレッダーにかける場合(シーシュポス条件)
▶︎30セントまで(早々に作業をやめた。とことんモチベーションを下げた)
・スタッフは用紙をチェックしない場合(無視)
▶︎26セントまで(シュレッダーに近いところまでモチベーションを下げた)
上司は、部下の仕事への認知が必要です。
・モチベーションを高める
卵理論(the egg theory)といって、
人は何かに労力を注げば、それを愛して大切にする性質があります。
この理論からすると、
手間を減らすことは、生産性の向上につながる良い点ではあるのですが、
人間の感情は一筋縄ではいかず、楽しみが減ってしまう場合があるようです。
わざと手間をかけさせて、愛着を持たせるマーケティング戦略もあります。
子どもへの愛情の大半は、
自分への愛情だったりします。
親の子どもに対する溺愛は、
子どもと自分との愛情を区別できなくなって生じるようです。
モチベーションには、
お金、やりがい、想像、挑戦、所有、アイデンティティ、プライド・・・
様々な要因が含まれます。
現代社会の「分業化」されたビジネスモデルでは、
出来上がる製品の社会的意義を知らなければ、
従業員のモチベーションを失わせる可能性があります。
★モチベーションのアクションプラン
周囲や自分のモチベーションを上げる方法を考えてみよう。
・チームメンバーや同僚にお金を投じてみよう。
【お金】幸せをお金で買う科学的方法【より少ないお金でパッピー】(前編)
・部下や同僚の仕事をねぎらおう。
・自分の仕事にあえて一手間オリジナリティを加えよう。